ヅカファンに限らず日本人は略称が好きだ。
フルネームを言う時間もないほど忙しいのかというとそうではなく、
省略する対象に自分なりの執着を示しているんだと思う。
好きも嫌いも執着の証。
それを否定はしないが、時に「その略称」に首をかしげることがある。

つい最近で言えば銀恋=銀ちゃんの恋だ。

ある一定以上の世代にとって「銀恋」は某有名デュエット曲を言うのよ~


歌詞引用しなくてもわかる方にはわかる名曲だと言い切り次へ。
オトナの男と女がほろ酔い気分で歌うのが「銀恋」。
再演「銀ちゃんの恋」評をして「初演の銀恋は…」とやられると
「初演のときあなたはいくつだったの」
余計なつっこみをしたくなる悲しいわたしの実年齢。

「銀恋」とは「銀座の恋の物語」の略称です(昔から)。

さすがに劇中で本家本元「銀恋」が歌われることはありませんでしたが
舞台鑑賞中このフレーズをやたら思い起こさせてくれたのが女秘書さあや。

オープニングから絶好調で舞台をひっぱる女傑、どこの会社にもいそうでいない面白冷徹キャリアウーマン。
本家本元の時代では「オールドミス」と呼ばれわたしの新入社員時期には「お局様」と恐れられたであろう年齢行ってる・男っけなし・仕事まっしぐらの悲しいベテラン女社員という位置づけ。

映画会社の専務秘書といえば聞こえはいいけれど、
頼りない日和見主義の上司のお尻を叩き、口ばっかりで中身のない俳優たちを叱り飛ばし、
年々衰えるボディに銀ちゃんも愛飲のユンケルだかリポDだかを飲んでは叱咤激励していそうな元気なお姉ちゃん。

自分で書いていてイヤになりますが。


姐御肌で何事にも一直線なのが玉に瑕、
それゆえの衝突も多くて傷だらけの人生送ってそうなところが何とも愛しい。

「あの時代」に生きているのが彼女の悲劇で、
今の時代なら結構社内にファンも多いはず。
お局様=やっかいな女傑という図式は古いわね、ホホホ。


なかなかああいうタイプは頼りになるんだぞ?
ともしわたしが東洋映画社員だったら見る目のない男どもにオススメするんだけど。
あ、その前に自分の世話しなく…以下略。

まあ十中八九さあや秘書の可愛さをわかる男は劇中には皆無だろうなーというところが見え見え。


観客側としては、これほど見ていて気持ちのいいキャラクターはいません。
出てくるだけで場をさらってくれる。
冒頭の「野郎ども。やっちまいな!」からスコーンとヒット飛ばす。

さあやちゃんの声はよく通り抑揚のつけかたも滑らか。
大仰な台詞回しもぎりぎりのところで上手ーくひっくり返して「笑い」に繋げちゃう。
彩音ちゃんと同期で、歌、芝居とも安定した実力の持ち主さん。
わたしが彼女を意識したのは大空さん花組初のディナーショー「SORA」の司会進行役「さあや」。


美青年SORAのマネージャーとしてビシバシ「彼」を売り出すべくあの手この手、
大空さんとの息もぴったりでともすれば「曲の紹介係」で終わりがちな役を見事「儲け役」にしてのけた女優。
もっと彼女の活躍を見たいなーと思っていただけに女秘書の怪演は嬉しかった。

女から見ると可愛くて仕方がないんですよね、ああいうタイプ。
銀ちゃんたちとは別出動、「ししとう」では後輩の男性社員を無理やりデュエットにさそってマイク握り締めて。
嫌がる後輩君を無理やり連れ戻し、キスしまくり、汽車ぽっぽごっこにつき合わせてまた嫌がれる。
仕事のストレスすごいんだろうなー家に戻っても寂しいんだろうなーって。
それがこと仕事になると、
「自分が何を求められているのか」
を第一に考え嫌われても任務を遂行する能力の持ち主。

頑張りすぎて言わなくてもいいことまで言うから男どもには嫌われちゃう。
そんな自分が情けなくてダイキライ!
容姿にもコンプレックスたっぷり。

だから言いたい。
「コンタクトにしたらいいのにー」
ぐらい言ってあげなさいよ、橘くん。

タイトルと内容に面白いズレがある「銀ちゃんの恋」、
わたしは素直に銀ちゃんの立場上の恋人は小夏で実質上の恋人はヤスだと言い切りますが、
「橘の恋」を書かせたら絶対さあや秘書は外せないと思っている。

だって二人のどつき合い、何かほのぼのしていませんでしたか。
2期上の長身めおちゃん相手に一歩も引かないさあやちゃんの度胸の良さもさることながら
日を追うごとに橘くん楽しそうに見えたんですが。


さあや秘書のすぐムキになるところを橘はしっかり気に入っているという目で見始めるとあのシーンは百倍面白い。
おそらく彼よりはしっかり年上姉さんだから恋愛対象にはしない。
しないけれど気になる。

おせっかいなともよ専務が「実はこういう青年がいるんだけどね」なんて見合い話なんぞ持ってきたらさあ大変、
橘くんやたら専務のところに顔を出す、気になって気になって仕方がないから。
そのうち「ししとう」にも顔出して、仕事の憂さ晴らししてるさあや秘書をさりげなくガード。

小夏とヤスと三角バトルしながら子分たちと飲んでる銀ちゃんに
「おめーも素直じゃねーなー」
見抜かれるの、これが。

いや、スター橘にアレはいかん、俺にはもっとふさわしい女がいる!
とかなんとか橘くん大慌てで。

ああ楽しい。

何を言いたいかというとさあや秘書と橘くんのどつきあいに「愛」が見えたと言う話。

あのシーンだけのDVD集があればいいのに。
<本編おまけ>で付かないかなー。

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