宙組さんの「雨に唄えば」を誰が/何の役を/どう演じるか/を想像しただけで数日楽しく過ごせる。

映画版は「ミュージカル映画」から「ミュージカル」をはずしたとしても、マイベスト映画10には入ってしまう娯楽映画の傑作だと思うし、松竹が製作した東山紀之さん主演の舞台版も星組さん版も両方ともハズレはなかった。

映画版との比較は無意味で、あの底力はプロデューサー、監督、主演者が総力を挙げて「映像の世界の最高峰」を創ろうとしたからこそ生まれたものだ。

映像の演出に3次元の舞台が正面から取り組むとどうしても無理が生じる。舞台版ドンの「大嘘サクセス・ヒストリー」は正直辛いものがある。

だが下手に映画版の脚本をいじるのは損だ。あの単純明快さが「ミュージカルシーン」の面白さや華やかさをぐっと浮き上がらせるのだから。

多少辛かろうが、松竹版も星組版も観終わってしまうとドンもコズモも、面白くて濃くて、何より格好いい男たちだ。男性俳優にとっても、男役にとっても、創り込みやすいキャラクターがその要因だと思う。

難しいのは「女性キャラクター」。

「演じる人は大変だろうな」誰もが心配するであろうご存知勘違い大女優リナ。

松竹版ではオペラ歌手でもある花山佳子さんが「悪声」に取り組んでいた。それはもう一生懸命に。花山さんのおっとりのんびりしたキャラクターと「美声」を見込んでのキャスティングだったと思うけれど、苦戦なさっていたと思う。やっぱり難しいんだ、周囲がうんざりするほど自分中心で/お馬鹿な/愛すべき/大女優なんて。

星組版は現花組主演男役、真飛聖さん。見事なスタイルを生かしてのドンにも世間にも「可愛いと思われ」「愛されていると信じきっている」可憐な女優ちゃんでした。映画版に「幼稚性」をブレンドして正解だったと思う。欲を言えば、ハイヒールを履いて欲しかった。ドンより頭ひとつ大きいぐらいでもよかったと思いますよ。全然わかっちゃいないまさしくお馬鹿ちゃんで面白かったと思う。

さらに、ヒロイン。

キャシーは娘役の範疇にもある役なのだろう。松竹版の薬師丸ひろ子さんも星組版陽月華ちゃんも「頭の回転のよさそうな」溌剌とした生意気レディでした。陽月華ちゃんは大成功だったと思います。たしかにお歌はうーん、でしたが。

でもキャシーは案外難しい。リナのような突飛さがないし言ってることも行動もしごくまとも、ごく普通のまじめな女の子が「女優」を目指して頑張っているだけ。周りが濃すぎるから分が悪い。大ミュージカルシーン「ブロードウェイ・バレエ」は特別出演の大スター(映画版シド・チャリシー)が持って行く。キャシーの出番はない。トータルで「ヒロイン」であるには、個性の強いリナや「幻想の女」、さらにはドンやコズモに囲まれても負けないぐらいのキラキラした存在感が必要だ。

リナちゃん=北翔くん、キャシー=アリスちゃん、君たちの個性ならまずは大丈夫だと思ってます!あとはどこをポイントにして浮き上がらせて行くか。楽しみに信じて待ってますね。

で。

目下ワタシが神様仏様ご先祖様一堂にすがりたいほど「頑張ってください」と祈っている役がもうひとりいる。もちろん女性キャラクターです。

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